雨の日
先日、雨の日の朝、女子学生たちが10人ほど、全員学校指定らしい同じグレーに赤のラインのレインコートを着て自転車に乗って僕を追い抜いていった。暗い 雨空の下、続々と通過していくグレーの集団の後ろ姿が妙に幽玄で映像的にとても美しく、撮ろうと思ったが、雨なので鞄にカメラをしまっていて撮れなかっ た。
雨にけぶって消えていく背中を見送りながら、最初は「写真には撮れなかったがとてもカッコイイ映像を見た」という満足感があった。が、その後 ふつふつと、写真に撮れなかったことに対する悔しさが頭をもたげてきた。この悔しさは写真的な功名心なのではなく、あのかっこいい映像を誰とも共有できな い悔しさなのだと思う。
あのときばかりは、ほんとうに画家に嫉妬した。あのカッコイイ映像を、あとからキャンバスに定着できる。でも写真はそこでシャッターを切らないと何も残らない。雨だからとカメラを鞄にしまっていたのは、もう写真家としてどうなの、という話なのである。
雨 中のレインコート+自転車、という要素だけをいうならば、野口里佳が『PHOTOGRAPHICA』最終号に掲載していた天才的な写真が先にあるわけで、 もし仮に僕があのときカメラ持っていたとしても(映像的にはまったく別物なのだけれど)なんとなく発表には躊躇したかもしれない。
でも、あれを誰かに見せたかったなぁ、という残念な感じが、いつまでもいつまでも抜けないでいる。