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いい医者って?

小さく生まれたヒナコを5ヶ月の入院中ずっと診てくれたC病院小児科のY医師に、僕は全幅の信頼を寄せている。そういう態度はたぶん、顔にも表れるのだろうと思う。

ヒナコの足の治療(ヒナコは左足の先天性脛骨列部分欠損という珍しい症例なのだ)のため大阪のB病院に紹介状を書いてもらおうとY医師を訪れたとき、僕の「B病院のK先生って、すごく評判を聞きますけど、そんなに凄い先生なんですか」との質問に、Y先生は以下のように答えた。

・・・・・・

その医師が「ええ先生かどうか」っていう判断は、人によっていろいろあるでしょう。

たとえば僕(Y医師)はええ医師かどうか。

僕は、患者さんからは気さくで話しやすいとか、そういう風に言われますけど、これは僕の師匠にあたる先生の影響をね、やっぱり受けるんですわ。僕の師匠がこういうタイプやったんです。知らんうちに話し方とか伝染するんやね。

悪く言うたら、演じてるわけですよ。ざっくばらんな医者、ってやつを。

たとえば、こないだ定期検診に来てたヒナコちゃんを廊下で見て、「あ、今日は検診ですか。ヒナコちゃん大きぃなったなぁ」って声かけますよね、僕。

それは、百人いる僕の患者を、僕が全部覚えてるから、っていうんじゃない。カマウチさんにとって僕はたった一人の主治医かもしれんけど、正直、ヒナコちゃんは、僕にとっては百人の患者のうちの一人です。今朝パソコンを見て、あ、今日は誰々が検診に来るねんな、って予習するから、『あ、ヒナコちゃん』って名前が出てくるだけです。冷たいようやけど、そんなもんです。

カマウチさんは僕をそれなりにええ医者やと思てるかもしれんけどね。ええ医者かどうかっていうのは、そういうところで判断するもんやないです。

じゃあB病院のK先生はええ医者かどうか、っていう話ね。

まず、K先生も僕も外科を勉強して来た医師です。でも僕は今ここで小児科の手配師(小児科の部長のことを自ら揶揄してこう言う)みたいなことやってますが、何も最初から小児科に来たかったわけやない。外科っていうのはものすごい広範な分野やからね。自分で何がしたい、って言うても、なかなか希望通りの道は歩かれへん。まぁいろんな事情が重なって、僕は流れ流れてここへ来たわけや。

でもK先生は、最初から小児整形の勉強をして、小児整形一本で来た人です。

正直ね、小児科って、最近テレビでよくやってるから知ってるでしょうけど、誰も好んでやりたがらない分野です。産科と小児科はね、ほんまにしんどい仕事ですわ。

でもK先生は僕なんかと違って、はじめから小児整形をやるために勉強を積んで来られた方です。そんな人、なかなかおらへんね。

とにかく、見栄えとか、そういうことやなしにね、患者さん本人にとって、何が一番大事なことか、っていうのを考えな駄目でしょ、医者って。

たとえば手の親指のないお子さんが生まれたとして、やってみたらわかるけど、人間ってね、親指がなかったら物をつかめんのです。残り四本の指では力が入らんのです。

で、K先生はどうするか。肋骨の端っこの骨を少し削って親指のあるべき場所に移植して、ちょっとした突起を作った。 これでね、物をつかむ、っていうことがめちゃくちゃ楽になるんですわ。親指のあるべきところに、その突起があるかないかで。

そういう工夫をね、ずっと考えてるような先生です。整形の世界って、ほんま、そういったアイデアが出るかどうか、ってことなんです。

そういう意味で、K先生は非常に優秀な医師です。 答えになってますか?

・・・・・・

このY医師の言葉を聞いて、K医師が「ええ医者」だというのがよくわかった。 で、やっぱりY医師も「ええ医者」を演じてる、本当にええ先生なのだと、ばれちゃいまいたよ(笑)

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